ザ・ソングライターズ

くるりの岸田さんが出るというので、恥ずかしながらはじめて「佐野元春のザ・ソングライターズ」をみる。

佐野さんが普通に大学の先生みたいな進行でおもしろい。話を聞いてるうちにひとりで先行して突っ走っちゃうところも、相槌のタイミングに独特の間があって、あれ?ってなったりするところもあるんだけど、このひとの音楽的な素養とか、文学的な教養みたいなものの深さがおもしろく、コマーシャルでポップなものと文化教養的なものをうまく結びつけていて、けっこう楽しくみた。

岸田さんはもっと会社員的というか、秩序だてていろんなことを組みたてるひとなんじゃないかと勝手に思っていたけれど、意外にすごく感覚的なひとなんだな。くるりの音楽は一見こむずかしいけど実はすごくわかりやすいアプローチが多いから、すごくことばを選んで、種あかしをしているような印象。音楽的なロックンロール、文学としてのロックンロール、ことばと音楽の結びつきやバランスのようなものの話なんかが、ものすごく等身大でおもしろかった。

わたしはしばらくパタリとくるりを聞かない時期があって、ジュビリーあたりからまた聴き直したひとだからあまり大きなことは言えないんだけど、長いスパンでみると、岸田さんのやりたかったことみたいなものが最近ようやくわかってきたような気がする。ワルツを踊れ、魂のゆくえときて、ひとまわりしたような印象があって、またくるりを聴くのがおもしろくなってきたところで、この話を聞けてよかった。

本館とか四丁目の風景も、なつかしかったな。見慣れた校舎でゲイノウジンが講義をしてるっていうのはなんだか不思議な感じ。わたしが学生だったころは、あんなに豪華なAV機器が揃った教室も特別講義もなかったけど、前衛的な授業だけはたくさんあっておもしろかった。あの学校のリベラルな雰囲気は今でもときどき懐かしくおもう。学生時代に聞いたことって意外に長く耳に残るから。